「第35回ヨコハマ・ワーグナー祭」コンサートレポート

●「第35回記念公演ヨコハマ・ワーグナー祭《東西の風》」コンサートレポート

2023年1月13日(金)、第35回という節目の開催回数を迎えた「ヨコハマ・ワーグナー祭」を、リニューアルされた横浜みなとみらいホール小ホールに会場を戻し、無事開催することができました。
ご来場の皆様、関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。


新春に相応しく、明るく且つ音響もさらに良くなった感の、新装の横浜みなとみらいホール小ホールにて、副題「東西の風」として、チェンバロ、ギター、ハープ、ピアノ、歌、チェロ、また和楽器の尺八や箜篌、と大型特殊楽器を含む、歴史的な意義においても、また視覚的にも、貴重な編成や演目が実現しました。
子供たちから大ベテランまで、実力派の自薦他薦の出演者陣により、真に迫る数々の熱演がステージから繰り広げられ、ほぼ満席に近いお客様の客席からは直に熱心に鑑賞してくださっての温かいオーラが反射してきました。
水野会長のスピーチの魅力にもより、ホールが一体感で包まれていった、という実感がございます。
受付などに立つ協会会員の運営チームワークもまた素晴らしく、内外から様々な感激の声やご意見を頂戴致しました。これからの指針、励みとなればと思います。
コロナ感染が収束傾向とはいえまだ心配も尽きない中の開催となりましたが、実行委員、そして当日スタッフ会員が万全の感染症対策をして、お客様をお迎え致しました。

「あの有名なリヒャルト・ワーグナーではなくて、クリスチャン・ワーグナーの祭なんです!」という説明は、35年継続開催した今でも、初めての方にはまだ必要で、このひっかかりが、この自主運営シリーズを地道に継続していくことの、苦労や困難をも象徴しています。
日本における洋楽発展の開祖と言える歴史的人物 クリスチャン・ワーグナーの存在を知り、その精神を讃え敬う、というテーマが大切な意義を持っていながらも一般的に知名度が低く、実際のコンサートが新春の華やかなガラコンサートでありながら「ワーグナー祭」という言葉の印象が、どこか哀愁を含む重いテーマを背負った地味な印象であること。
低料金に抑えた3千円というチケット料金設定が発表会的なアマチュアと勘違いされがちながら実は一流の実力派のプロ演奏家の高度な内容が鑑賞できる公演であること。
こういった、これらのギャップや矛盾が、このシリーズの面白みでもあり、アピールポイントでもあり、背負っている負のイメージについて、逆にそれを明るい前向きのパワーに変えていこうとする努力や粘り強さを以って、倍返しの、楽しく明るく内容の充実したコンサートにしたい、という強い希望から第35回実行委員会の準備はスタートしました。


当横浜音楽文化協会(おん・ぶん・きょう)創立と同時に始まっているこのシリーズは、当協会の理念を象徴する意義を併せ持った音楽イベントであり、協会の発足に関わる精神的な根幹を、継続して繋ぎ守っていることを、再認識と再確認をしながら、10ヶ月前から準備をしてまいりました。
というのは、私も当協会の創立時からの一会員であると同時に、私事ではございますが、両親がこの協会の設立と、ワーグナー祭開始の当事者である事から、そのような両親を側で見てきたということが長年ございました。今回初めて協会幹部より、実行委員長を命ぜられました。
35年前当時忘れ去られていた歴史上の人物、クリスチャン・ワーグナーの存在を、横濱貿易新報(神奈川新聞の前身)大正年間の音楽記事を全て抜き出すという基礎研究や明治期の英字新聞や雑誌から見つけ出し、その音楽活動の精神性に着目し「ワーグナー祭」を開始したのが、我が母の齋藤龍(音楽学者)であり、また我が父の齋藤鶴吉(チェロ奏者)が、会員の中堅プロ音楽家たちが苦楽を共にしながら自らの力で「ワーグナー祭」を運営していくことで、生き甲斐を感じ仲良くなり絆を深めることができるという工夫から「ワーグナー祭」の運営形態を形成したという、二つの側面で、「ワーグナー祭」は続いて来たと考えております。
大袈裟に言えば、社会の中で音楽家がどう生きていくべきか、という問いかけをしているのが「ワーグナー祭」のテーマではないかという事です。昨今のコロナ禍を生き抜くヒントもあろうかと感じました。


クリスチャン・ワーグナー音楽墓前祭も、年々充実さを増してきており、横浜音楽文化協会をこれまで支えてこられた多くの先輩会員の思いを繋いで参りたいと思います。
今回は35年の経緯や歴史やコンセプトをご説明するために、「第35回記念公演ヨコハマ・ワーグナー祭を成功させたい!」というクラウドファンディングを試み、多くの方々にお力添えを頂きまして、本当に有難うございました。
また沢山の企業と個人の御協賛各位、御協力、御後援各位、特に第1回の精神に立ち返り教育委員会の後援をいただき、御礼申し上げます。
お陰様で、第35回記念公演はどうにか成功できたと思っております。


第36回の実行委員会にバトンを渡すとともに、ご来場くださった皆様、ご声援を頂きました皆様にも、引き続き「ヨコハマ・ワーグナー祭」を宜しくお願い申し上げます。


第35回記念公演ヨコハマ・ワーグナー祭 実行委員長 斎藤葉

開演前の風景

村井頌子(チェンバロ・ダンス)篠原正志(ギター) 

斎藤葉(箜篌(Kugo)・ハープ)

小田切一恵(ソプラノ)平賀晴・斎藤ゆり夏(こども重唱)リンリンランララ星人(ハープ楽団)落合敦(ピアノ)

迫本章子(チェロ)伊藤 翔(ピアノ)

落合敦(ピアノ)

ゲスト・三橋貴風(尺八)

ゲスト・三橋貴風(尺八)落合敦(ピアノ)

挨拶 一般社団法人横浜音楽文化協会理事長(ワーグナー祭当時は会長)・水野佐知香

終演後のロビー